【diary】30日

 客は若い(といっても俺より確実に年上くらい)の女だった。
「ハガキありますか?」
「はい、ございます」
「あの……200枚ください」
 彼女が言いにくそうに放った一言に、俺の脳は一瞬停止させられた。
「200ですか? 少々お待ちください」
 面倒だが、これも仕事。数えるしかない。
 まず10枚。次にもう10枚。さらに10,10,10。50枚まで数えたところで、一旦それを全部まとめる。左に置いてある束と、今数えた50枚を並べ、揃える。50枚のほうを抑え、束を横から押し右にスライド。若干のズレが生じるが、約50枚の束がもうひとつ出来上がる。そこで、今取った残りを見てみる。何十枚かあるのだが、どうみても合計で200枚はなさそうである。
「すみません、200はないですね」
「え、じゃあ、どのくらいありそうですか?」
「そうですねぇ。百数十枚はあると思います」
「じゃあ、100枚ください」
「はい」
 俺は客の眼前でハガキを数え始めた。先ほどと同じく、10枚ずつ区切っていく。時間がかかるので、同僚も手伝ってくれた。しかしレジに人が並んだため、再び俺と彼女のマンツーマンとなった。
「はい、ではこちら100枚ですね。5000円になります」
 俺はようやく数えた100枚を揃え、袋に入れようとした。
「あの、すみません、インクジェット用のハガキってありますか?」
 彼女が言った。
「いえ、うちは取り扱ってないですね」
 俺はそう言った。すると、彼女の口から信じられない一言が聞けたのである。
「そうですか、じゃあ、郵便局で買ってきます」
 彼女がきびすを返し、店をあとにした。
 残されたのは100枚のハガキと1枚の袋、ぽつんと突っ立っている俺だった。
 
 俺は彼女の背中に、心の声で語りかけた。
 今の時間、本局まで行かないと郵便局は開いていませんよ、と。
 
 
 
以上、本日のいやがらせ大賞でした!
いや、順番逆だろうと。まずインクジェットかどうか聞けよと。
悔しいので、100枚は崩さずにそのまま袋に入れてしまっておきました。
 
久しぶりに小説チックに書いてみましたけど、ブランクのせいか描写うまくできないっすね。